100年の時を超えて蔵から生まれ変わった家

K.Matsunaga K.Matsunaga
浄明寺の蔵, O設計室 O設計室
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現代の住宅は、ライフスタイルや使用される建材の種類によって、どちらかというと洋風に仕上がっているものが多くなっています。住宅やインテリアはまるでファッションのように、そのときの流行や時代の流れにも左右されるようになりました。しかし、そのような風潮だからこそ、日本古来からの伝統的な工法や素材が見直され、それが新鮮に感じられることもあります。今回ご紹介するのは、築100年近い土蔵を移築し蘇らせた住宅です。O設計室が手掛けたこの家は、昔ながらの蔵戸や竹小舞を利用した土壁など、日本の伝統的なエッセンスを生かした魅力が溢れています。

伝統的な竹小舞から編んだ土壁の外観

築100年近くにもなる蔵の佇まいは、現在なかなか見られないどっしりとした姿をしています。その昔ながらの味わいのある外観を生かし、個性的な住宅へと生まれ変わりました。外壁は竹小舞から編んだ淡路島の土を塗った土壁で仕上げられ、その厚みは15cmにもなるのだとか。自然素材ならではの保温効果や温かみのある質感は、現代の人工的な素材では味わえない魅力があります。現在では、もしかすると竹小舞をみたことのない方のほうが多いかもしれません。日本の国土や気候に合った工法は、ぜひこれからの未来へも受け継いで行きたい手法です。

格子戸が風格を増すエントランス

家へのエントランスは、昔の格子戸を利用しています。現代では新たに制作されることは少なくなり、昔ながらの使い込まれた味わい深さや、趣のある雰囲気がこの入口の重みを増しています。昔に作られていた格子戸のような扉や家具には、現在なかなか見られなくなった欅の無垢材など、受け継いでいきたい技術や魅力が詰まっています。手でその扉に触れるたび、100年の記憶がかすかに伝わってくることでしょう。

和空間の中のモダンなキッチン

元蔵だった空間の中には、30cm感覚で柱が建っています。作り手は、その強靭な構造美を見せるために間仕切りを使って通常の住宅のように空間をわけることをせず、内部に2つの箱を設置することにしました。そのひとつが、このキッチンです。開閉式の窓があり、開けるとカウンターテーブルとして使うことができ、閉じると空間のアクセントとなる箱になります。キッチンという存在を隠すこと、重厚な蔵の構造体の中の遊び心のあるアクセントとしてこのキッチンは機能しています。モダンで独特なグリーンの色合いは、濃茶の欅の構造体の中でひときわ存在感を放ち、キッチンに立つたびに芸術的な空気を感じられるでしょう。

アートな雰囲気を感じるバスルーム

そして二つ目の箱は、トイレとバスルーム。内部は全てグリーンのモザイクタイルで仕上げられ、間接照明によって幻想的な空間が仕上がっています。内部に置かれているのは、アンティークのバスタブ。レトロなグリーンカラーが印象的で存在感のあるバスタブは、通常外から見えないのがもったいないくらいアーティスティックで独特な存在感を放ちます。日常生活する空間が、このように非日常の雰囲気になると、毎日の暮らしにメリハリがつき、豊かな感性を磨いていくことができそうです。

構造の醍醐味を感じられる2階

1階の密な柱の構造にも、現代ではなかなか見られない姿に驚きますが、2階へ行くとさらに豪快な屋根の構造を見ることが可能です。中心にはどっしりとした大黒柱が立ち、それが巨大な棟木を支えるダイナミックな構造が見られます。このような迫力のある構造体を見られることは近年では本当にまれになりました。美しい欅の歴史を重ねた風合いや、しっかりとこの家を支える構造美にはただ圧倒される空気が流れます。現代では、住宅は合理化、効率化された作りが主流になってしまいましたが、竹小舞からの壁、格子戸をはじめこのような昔ながらの100年続く伝統的な素材や技術を受け継ぎ、価値を絶やさないようにしていくのはバトンタッチされた私たちの役目となるかもしれません。

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